2014年9月17日水曜日

科学のクラウドソーシングがブームに



 USA Todayの記事によると、科学分野でもクラウドソーシングがブームになっているそうです。


(原文より要約)

 33歳のChris Lintottは世界的に有名な天体物理学者、BBC番組「The Sky at Night」のプレゼンターであり、クラウドソーシング・プラットフォームZooniverseの創設者でもあります。

 Google Givingからの助成金を受けて、彼は実質的に誰でも科学的プロジェクトを立ち上げ、データを点検するためバーチャルなボランティアを呼び込むことができるよう、Zooniverseを拡張しようと計画しています。

 類似サイトにMITのEye WireやNASAのSETIおよびFold ITがありますが、Zooniverseはその中で最も規模が大きく、世界中の100万人のボランティアがシマウマから第二次大戦 の日記まであらゆるものに目を通しているのです。アマチュア科学者への懐疑にもかかわらず、このサイトの研究は四つの太陽を持つ惑星を含む科学的発見を導いてきました。Lintottにとって、クラウドソーシングには、ますます洗練された技術が生み出す大量のデータを科学者が扱うのを助けること、そしてより多くの人々に科学に関心を持ってもらい貢献してもらうこと、という二つの目的があります。

 子供の頃から学校の望遠鏡で星を研究する事に時間を費やしてきたLintottは、まだケンブリッジ大学の学生だった2000年にBBCの番組にゲストとして招待されて以来定期的に番組に登場し、2012年にはプレゼンターとなりました。

 彼は研究を続けて星の配列に関する博士論文を書き上げましたが、さらに銀河系の向こうを研究するにはまず100万の銀河を分類する必要がありました。そのため、彼はNASAの最初のクラウドソーシングに関する実験Clickworkersに倣って、2007年にGalaxy Zooを立ち上げたのです。50人で5年が掛かると想定に反して、たった二日で100万の銀河が分類され、そのデータが有効であると証明されました。他の科学者が同様の手法を利用したいと連絡してくるようになり、より広範なプロジェクトを扱うZooniverseを2009年に立ち上げました。

 調査手法への疑念もあります。US National Park Serviceによる研究は、ボランティアによるデータは、特に課題が複雑であればバイアスや間違いを含みやすいという懸念を強調しており、科学者の間には批判的な声もあります。しかし、Lintottはクラウドソーシングで得られたデータは、査読論文で利用されることでも証明されているように信頼できるし、市民科学者に問題があるとすれば真剣すぎることだと反論します。Zooniverseのユーザーがサイエンス誌の表紙を飾ることは無いかも知れませんが、Lintottのロジックと楽観主義はすでに新発見を加速しているのです。

(要約ここまで)
 
 ボランティアによるデータ収集だけでなく、インターネットによるデータ収集などにはいまだに批判が多くあります。ただ、きちっとした研究機関が、正確なデータを出しているかというと最近の出来事を見るとそうとも言えない気もします。

 また、データが正しいかどうかを再現して確認するのには限界があるわけで、それなら少数の専門家により誤ったデータが作られるよりも、クラウドを通じた、圧倒的多数の多様な回答の方がまだましな気もします。

 (NASAの事例はこちらにもあります)


2014年4月22日火曜日

5段階評価ではワーカーを評価できない

5段階評価は高止まりする。

多くのクラウドソーシングプラットフォームでは、ワーカーの評価に5段階評価を利用しています。  

 例えば、oDeskでは、
  • Skills
  • Quality
  • Availability
  • Deadlines
  • Communication
  • Cooperation
という指標に分けて、それぞれを5点満点で評価しています。この5段階評価ですが、実はあまりあてになりません。

 5なのか、4なのか、これはかなり曖昧な定義で評価者の主観に依存してしまいます。

 特にoDeskなどのグローバルなプラットフォームでは、日本人の品質の5と他国の評価者の5ではおそらくその意味合いが大きく異なります。ですので、例え、5点が付いているワーカーでも、我々が5点満点からイメージするような品質が得られないようなことは多々あります。

 更に問題なのは、5をつけるのが当たり前という状況になっており、全体として評価が高止まりしてしまっていることがあげられます。 

 筆者が以前調べたところでは、

 oDeskで、"translation"を行い、実績が100時間以上をワーカーの評価点を調査したところ、87%が平均4.0以上の評価を得ており、1000時間以上では、90%を超える人材が4.0以上


となっていました。ある程度、実績のあるワーカーを雇用とようとしたら、ほとんどが4.0以上であるので、5段階評価ではその差を見極めるのは困難になっています。

 実際5段階評価を当てにして発注してみたら、ひどいクオリティーだったということは多々あります。その辺は、こちらにも書いてありますので、よろしければ。


稼いでいる人ほど評価が低い? 

さて、今回は、この5段階評価に関する研究を一つ紹介します。

Profile Information and Business Outcomes of Providers in Electronic Service Marketplaces: An Empirical Investigation

というオーストラリアの研究者の論文です。

 Electronic Service Marketplace(ESM)において、provider(サービス提供者、ワーカー)の売上が、プロファイル情報(5段階評価、スキル数等)とどのような関係にあるかを調べています。

 ESMとなっていますが、恐らくクラウドソーシングプラットフォームであり、Freelancer.comあたりではないかと推測されます。

 さて、内容はというと、providerの評価を、
  • External Information:provider自身が提供するデータ。ポートフォリオの数、テスト結果等
  • Internal Information:プラットフォームから与えられるデータ。5段階評価
に分けて、これらの指標とproviderの売上との相関を測定しています。

 データは、年間$50,000以上のprovider217社となっています。

 結果としては、

External Informationと売上高は正の相関を示す

Internal Informationと売上高は負の相関を示す

となっています。

 まず、Externalについては、provider自身が提示したポートフォリオの数や、スキルテストで上位10%以内に入ったスキル数などが、売上に影響しています。

 ただ、相関があるといっているだけで、因果関係までは言及しておらず、例えば、ポートフォリオ数などは、当然仕事を多く行い、数をこなせばポートフォリオも増加するので、ポートフォリオ数多い→売上高いとは言えなさそうです。もしろ、因果関係としては、逆で、多く仕事をして売上が上がるとポートフォリオリオが増えると考えられます。
 
 一方で面白いのは、Internalの情報(ここでは発注者からの5段階評価)と負の相関を示しているところにあります。 

 売上が高いproviderほど、評価が低いという相関を示しています。当然、評価が低くなることで、売上が上がるという因果関係は考えにくく、この論文でも、、売上が高くなるということは、必然的に低評価がつく可能性が上がるのが理由ではないかと述べています。

 つまり、売上が高い→多くの受注を受ける→多くの評価を受ける→たまに5でない評価がつく可能性が上がるということです。

 前半でも述べたように、クラウドソーシングのプラットフォームでは、5がつくのが当たり前の状況となっており、どちらかときたま4がつくといった状況です。

 ですので、「なんども受注していれば、4をつけれれることもあるさ」という状況で、売上が高くなると、評価が下がる可能性が高まってしまいます。これは、オークションサイトなどでも見られる傾向らしいです。

 このように、良いワーカーを見つけようと思えば、5段階評価はあまり役に立たないのですが、多くのプラットフォームで目立つ位置にあり、しかも発注者にとっても理解しやすい(した気になりやすい)ということもあり、その指標を重視してしまいがちです。

 ただ、本当に良いワーカーを見つけようと思えれば、発注者も単純な5段階評価だけでなく、ワーカーとの事前コミュニケーションや、多面的な情報をよく見て選択することが重要です。

 その辺は、こちらの書籍にも書いてありますので、よろしければ。最後に宣伝でした。

2014年3月21日金曜日

実践クラウドソーシング発売!

 当ブログメンバーで書いた、クラウドソーシングの実践的活用書、『実践クラウドソーシング』が発売になりました。

 今回は、kindleとPOD(受注生産の紙書籍)にて発売しております。

 
 
 本書は、主に発注者の視点から、いかにクラウドソーシングを活用するかを主眼としており、プラットフォームへの登録上のポイント、発注時の注意点など、実践的に活用方法を提示しています。
 
 一方で、発注者から見た、良い受注者についても述べています。フリーランスとして働く方々にとって、クラウドソーシング上で発注者がどうみているかを紹介しており、今後発注を伸ばしたい人には参考になるかと思います。

 また、クラウドソーシングとはそもそも何という方には、こちらも合わせてお読みいただければと。


 


 今後本サイトにて、実践クラウドソーシングの内容の一部を紹介していく予定です。

 ぜひ、ご一読を。

2014年3月13日木曜日

実践クラウドソーシング

 今週金曜日に、CrowdScopesのメンバー共著で執筆し、東工大比嘉教授に監修していただいた、新書、「実践クラウドソーシング」が今週末に発売されます。


 例によって、インプレスR&Dからの出版ですので、kindleもしくは、PODとなります。

 我々メンバーが、個人や団体等のプロジェクトで発注した経験から、クラウドソーシング利用時のノウハウを読みやすくまとめています。

 主に発注向けの内容ではありますが、発注者からみた受注のポイント、活躍するフリーランサーへのインタビューなども掲載しており、クラウドソーシングで受注することを目指す方にもお勧めです。

 今後、このサイトでも一部内容を紹介予定です。

 これからクラウドソーシングで、発注・受注しようとしているかたは是非ご期待ください。
 

 

2014年2月17日月曜日

誰もが世界とつながる時代

 オープンリソース社会

 1990年代からインターネットが普及するにつれて、情報はよりオープンになり、情報の非対称性が解消されてきました。かつては一部の人々が所持していた情報が、(無償・有償で)オープンになることにより、情報の非対称性が解消され、以前に比べ適切に競争が行われる社会になってきています。

 情報がオープン化することで、顧客は事故車両の中古車を高く売りつけられることも減り、家電製品を最安値で購入することも可能になりました。

 こういった情報のオープン化の流れは、まずは単なる知識としての情報を中心に発生しましたが、最近では人のもつノウハウや、人材の評価・能力などもオープンになりつつあります。

 これからは人材の情報は広く共有され、どこにどういったスキルを持つ人が存在しているのかを、世界中の企業、個人が共有し、そういった人材を有効に活用できる社会が登場する。東京工業大学比嘉邦彦教授は、こういった社会的概念を提唱しており、オープンリソース社会と呼んでいます。

 クラウドソーシングは、こういったオープンリソース社会における、一つのツールであると言えます。

 「クラウドソーシング」という言葉そのものは、今後バズワードになり、単なる「小遣い稼ぎサービス」に矮小化されるかもしれませんが、クラウドソーシングをはじめとした、人材がオープン化し、世界規模での共有、活用が始まるという流れは、今後も変わらないと考えられます。


 オープンに人材が活用できる時代


 人材情報がオープンになるなかで、企業はより公平に人材の活用ができる時代が来ています。

 これまで、優秀な人材や海外の人材を有効に活用できる企業は限定的でした。

 まず、優秀な人材を登用しようとすれば、これまでの雇用方法ではそういった人材が確保できるのは、一部の大企業が中心でした。新卒採用であれば、優秀な人材は当然ブランド力や、企業の規模、報酬等の優れた会社に流れていき、中小・スタートアップは不利な立場にありました。また、中途採用においてもブランド力のない企業は、高額な報酬が必要でストックオプションを活用するなどしなければ、優秀な人材の採用ができない状況にありました。

 更に、海外の人材を活用するとなると、海外との独自ルートを持つ必要があり、それは中小・ベンチャーにはさらに不利な状況になります。例えば、海外のオフショア拠点を設置しSEを確保するといったことや、高額なブリッジコンサルを活用し、海外人材とのパイプを活用するなどは、資本が必要とされ、大企業の優位があるという状況でした。

 しかしながら、こういった状況に対して、クラウドソーシングはより平等な人材活用の機会を提供します。例えば、oDeskの利用企業の多くはスタートアップ企業であり、米国スタートアップ企業が、これまで大企業しか活用できなかったインドやロシアの積極的に活用し、優秀な人材を低コストで活用しています。

 日本企業においても、こういった活用は十分に可能と考えられます。

 英語の壁はあるので、秘書業務を海外に頼めるかどうかは難しいとこですが、少なくともソフトウェア開発のような技術的な仕事、直接顧客接点を持たない業務などは、クラウドソーシングが有効活用できる可能性が高いと言えます。特に、大企業は社内余剰人員を抱えて、外部リソースが有効活用できないなか、成長途中の中小・スタートアップにとっては、有効な人材活用手段であり、競争優位を確保できる可能性があります。

世界で働けるプラットフォーム


 一方で、ワーカーにとっても、クラウドソーシングは、新たな働き方を提供するプラットフォームと言えます。

 高度な知識を持ったワーカーであれば、より可能性を広げられます。例えば、近年注目されている高度スキルの必要な職種にデータサイエンティストと呼ばれるものがあります。これは、高度なデータ分析のスキルを持ち企業の情報を分析し施策を実施することで、企業の競争力を上げる人材です。

 Googleのハル・ヴァリアン・チーフエコノミストは、「この先10年でもっともセクシーな職業である」と述べており、企業のニーズは急速に高まってきています。しかしながら、マッキンゼーのレポートによると、「Deep analytical talentが 2018年までにUS で14 万人-19 万人不足する」とも述べられており、供給は不足してます。

 そういった中、米国のkaggleは9万人を超えるデータサイエンティストを集めており、多くの大手企業が、企業内で解決できなかったデータ分析の課題をこのサイトで解決しようと試みています。その中には、GEやFacebookなどといったそうそうたる企業が名を連ねています。

 例えば、GEはFlight Questと呼ばれる課題を賞金総額25万ドルという高額な懸賞金を付けてkaggle上で解決法を募集しています。

 Flight Questは、パイロットにリアルタイムでより効率的な飛行プランを提示するアルゴリズムを見つけ出すというもので、大量の航空データをもとに参加者であるデータサイエンティス達が分析し、より効率的なモデルを作り上げます。参加者間のコンペティションを通じて日々モデルの精度は向上し、最終的に上位数名が賞金を手にすることができる。GEは最終的な結果を活用することで到着予想時間の精度が40%向上すると述べています。

 このように仕事が定量的に評価可能であるが、何が最適かはわからない課題はコンペティション形式が向いていると言えます。こういった課題をクラウドソースすると、多数の参加者から日々より最適な解が提出されてきます。そして最終的にはある程度の解のところで結果が収束し、現時点の科学で妥当な最適解に落ち着きます。一人のデータサイエンティストに高い報酬を払ってモデルを作ってもらうよりも、より最適な解が得られる可能性が高く、クラウドの多種・多様な高度な知識が有効に活用できる事例と言えます。

2014年2月9日日曜日

「クラウドソーシングの衝撃」 書店販売開始

 

「クラウドソーシングの衝撃」が、2月7日より書店流通開始されました。

 この書籍は、インプレスのNextPublishingから販売しており、kindle等の電子書籍とPOD(ペーパーオンデマンド、受注生産)で流通されていました。

 本書の売れ行きも良いということで、めでたく書店にならぶことになりました。

 

 
(書店流通用のソフトカバー版が追加です。)

 出版社にとっては、リスクの少ないkindleやPODでまずは出版し、売れ行き好調ならリスクを取って書店に並べるというモデルになります。まあ、kindle&PODがテストマーケティングみたいなものかと。出版社にとっては、リスクが少なくなるモデルです。

 出版社にリスクが少ない分、著者も比較的自由に書けるのがメリットです。NextPublishingは、一般流通だと売れないだろうなというようなニッチな書籍も多数あり、そういったものを書きたい著者にとっては良いモデルかとも思います。

 さて、ようやく書店に並びだしたのですが、書店によって取扱い度合いがだいぶ違います。

すごくプッシュしていただいている恵比寿有隣堂


(ちきりんさんにPOPのご協力いただきました。)


平積みしていただいている、八重洲ブックセンター



 一方で、ただ、ひっそりと棚に1冊置いてあるような書店もあり、書店によりばらばらです。


 ちなみに、NextPublishingはもともとkindle等の電子出版を前提にフォーマットされているので、もともと紙の本を前提として書籍に比べると、デザインや体裁が見劣りするのは否めません(内容で勝負です)。まあ、実験的な出版ですので、その辺はご了承いただければと。

 書店で見かけたら、ぜひ、手に取ってみてください。

2014年2月4日火曜日

急拡大するクラウドソーシング市場


 ICTの進歩とともに拡大するクラウドソーシング市場は、ここ数年急拡大しています。

 Crowdsouricng.orgによると、限定された15社だけですが、2009年の1億4000万ドルから、2010年に2億1400万ドル(前年比52.5%)、2011年には3億7500万ドル(前年比74.4%)と拡大しています。

 また、 Staffing Industry Analystsによると、2012年には10億ドルを突破するといわれ、2018年には50億ドルに達すると予測されています。

 インターネット白書2013 では、2013年に30億~50億ドルに達するとも述べられており、各企業が予測する以上に急速に拡大している可能性もあります。

 一方で、米国の労働派遣市場の規模は、2012年で1,000億ドル程度とも言われており、これと比較するとクラウドソーシング市場は、まだまだ小さい規模ですが、労働派遣市場の伸び率が年率9%程度なのに対して、クラウドソーシングの伸び率は圧倒しており、近いうちに一つの大きな雇用形態となるのは確実と言えます。

 日本においても矢野経済研究所の推計によると、2013年度は前年比230.9%となる246億円を見込んでおり、2017年には1,474億円とも試算されています。規模は小さいながらも、急激な成長が見込まれていると言えます。

 国内外で一つの労働市場として拡大しているのが見て取れます。

2014年1月28日火曜日

クラウドソーシング登場の時代的背景


クラウドソーシングはここ1,2年で急激に普及してきており、最近メディア等でよく耳にするようになってきていますが、その生まれとなると2006年にさかのぼります。

 クラウドソーシングという言葉は、2006年にWIREDの記者ジェフ・ハウが定義したのがはじめだといわれており、そこでハウは、「企業、組織が、自社もしくはアウトソースの人材により実施していた業務を、よりオープンかつ不特定多数の人的ネットワークから人材を集め、実施すること」と述べています。。その後、いくつも定義が出てきていますが、インターネットを利用し、世界中の多様な人材を活用し仕事を行うことと言えます。

 クラウドソーシングの考え方そのものとなると、更にさかのぼる必要があります。

現在280万人の登録者を抱える大手クラウドソーシングサイトのElanceは1998年のインターネット普及初期段階からサービスを提供しています。このサイトは当初はフリーランスがインターネットを通じて仕事を得るサイトとして登場しており、トーマス・W・マローンの2004年の著書『Future of Work』(フューチャー・オブ・ワーク)で、インターネットでフリーランスが活躍する新たな経済、e-ランス経済のプラットフォームとして紹介されています。登場当初から注目を集めるサービスではあったと言えます。




 その後、2004年には、oDeskが登場し、現在では300万人を超える最大規模のサイトとなっていいます。日本では、2008年にランサーズがサービスを開始し、その後、2012年にクラウドワークス、Yahoo!クラウドソーシングが登場しています。2014年1月現在、ランサーズは23万人、クラウドワークスは10万人の登録者を有し、近年急速に市場が形成されつつあります。

 また、日本では、リンダ・グラッドンの「ワーク・シフト」やノマドブームの影響もあるかもしれませんが、企業に依存しない新しいワークスタイルを実現するサービスとしても注目されています。

 このように、登場して7年以上経つクラウドソーシングですが、近年の拡大を支えている大きな要因の一つは、ICTの進歩と言えます。

 通信環境の整備やPC等の端末の低価格化により、インターネットを利用できる環境が整い、世界中のどこでも、だれとでも繋がることができる時代になってきてます。それによって、インターネットを通じて、米国西海岸のライターにマニュアル作成を依頼したり、バングラディッシュの翻訳家に和英翻訳を依頼することが可能になってきています。

 また、インターネット環境の進歩に合わせて、コミュニケーションツールが整備されてきたことも大きな要因と言えます。かつてはインターネットを通じたコミュニケーションは、文字ベースであり、メール、掲示板といった表現力が限定されるツールが中心でした。しかしながら、最近ではビデオや音声をやり取りしたり、skypeやgoogleハングアウト等でリアルタイムに会話することもできるようになり、より複雑なコミュニケーションが可能になってきています。ワーカーを選ぶのにskypeで面接をしたり、途中成果物をビデオファイルでもらうようなことはあたり前に行われています。

 実際に、インドのエンジニアにソフトウェアの開発を依頼したケースでは、途中段階の納品物はビデオファイルで送られてきて、その内容を指摘して、さらに開発を進めてもらうようなやり取りをしています。単に文字ベースでやり取りして、最後まで納品物を見られないのに比べれば大きな進歩と言えます。