オープンリソース社会
1990年代からインターネットが普及するにつれて、情報はよりオープンになり、情報の非対称性が解消されてきました。かつては一部の人々が所持していた情報が、(無償・有償で)オープンになることにより、情報の非対称性が解消され、以前に比べ適切に競争が行われる社会になってきています。
情報がオープン化することで、顧客は事故車両の中古車を高く売りつけられることも減り、家電製品を最安値で購入することも可能になりました。
こういった情報のオープン化の流れは、まずは単なる知識としての情報を中心に発生しましたが、最近では人のもつノウハウや、人材の評価・能力などもオープンになりつつあります。
これからは人材の情報は広く共有され、どこにどういったスキルを持つ人が存在しているのかを、世界中の企業、個人が共有し、そういった人材を有効に活用できる社会が登場する。東京工業大学比嘉邦彦教授は、こういった社会的概念を提唱しており、オープンリソース社会と呼んでいます。
クラウドソーシングは、こういったオープンリソース社会における、一つのツールであると言えます。
「クラウドソーシング」という言葉そのものは、今後バズワードになり、単なる「小遣い稼ぎサービス」に矮小化されるかもしれませんが、クラウドソーシングをはじめとした、人材がオープン化し、世界規模での共有、活用が始まるという流れは、今後も変わらないと考えられます。
「クラウドソーシング」という言葉そのものは、今後バズワードになり、単なる「小遣い稼ぎサービス」に矮小化されるかもしれませんが、クラウドソーシングをはじめとした、人材がオープン化し、世界規模での共有、活用が始まるという流れは、今後も変わらないと考えられます。
オープンに人材が活用できる時代
人材情報がオープンになるなかで、企業はより公平に人材の活用ができる時代が来ています。
これまで、優秀な人材や海外の人材を有効に活用できる企業は限定的でした。
まず、優秀な人材を登用しようとすれば、これまでの雇用方法ではそういった人材が確保できるのは、一部の大企業が中心でした。新卒採用であれば、優秀な人材は当然ブランド力や、企業の規模、報酬等の優れた会社に流れていき、中小・スタートアップは不利な立場にありました。また、中途採用においてもブランド力のない企業は、高額な報酬が必要でストックオプションを活用するなどしなければ、優秀な人材の採用ができない状況にありました。
更に、海外の人材を活用するとなると、海外との独自ルートを持つ必要があり、それは中小・ベンチャーにはさらに不利な状況になります。例えば、海外のオフショア拠点を設置しSEを確保するといったことや、高額なブリッジコンサルを活用し、海外人材とのパイプを活用するなどは、資本が必要とされ、大企業の優位があるという状況でした。
しかしながら、こういった状況に対して、クラウドソーシングはより平等な人材活用の機会を提供します。例えば、oDeskの利用企業の多くはスタートアップ企業であり、米国スタートアップ企業が、これまで大企業しか活用できなかったインドやロシアの積極的に活用し、優秀な人材を低コストで活用しています。
日本企業においても、こういった活用は十分に可能と考えられます。
英語の壁はあるので、秘書業務を海外に頼めるかどうかは難しいとこですが、少なくともソフトウェア開発のような技術的な仕事、直接顧客接点を持たない業務などは、クラウドソーシングが有効活用できる可能性が高いと言えます。特に、大企業は社内余剰人員を抱えて、外部リソースが有効活用できないなか、成長途中の中小・スタートアップにとっては、有効な人材活用手段であり、競争優位を確保できる可能性があります。
世界で働けるプラットフォーム
一方で、ワーカーにとっても、クラウドソーシングは、新たな働き方を提供するプラットフォームと言えます。
高度な知識を持ったワーカーであれば、より可能性を広げられます。例えば、近年注目されている高度スキルの必要な職種にデータサイエンティストと呼ばれるものがあります。これは、高度なデータ分析のスキルを持ち企業の情報を分析し施策を実施することで、企業の競争力を上げる人材です。
Googleのハル・ヴァリアン・チーフエコノミストは、「この先10年でもっともセクシーな職業である」と述べており、企業のニーズは急速に高まってきています。しかしながら、マッキンゼーのレポートによると、「Deep analytical talentが 2018年までにUS で14 万人-19 万人不足する」とも述べられており、供給は不足してます。
そういった中、米国のkaggleは9万人を超えるデータサイエンティストを集めており、多くの大手企業が、企業内で解決できなかったデータ分析の課題をこのサイトで解決しようと試みています。その中には、GEやFacebookなどといったそうそうたる企業が名を連ねています。
例えば、GEはFlight Questと呼ばれる課題を賞金総額25万ドルという高額な懸賞金を付けてkaggle上で解決法を募集しています。
Flight Questは、パイロットにリアルタイムでより効率的な飛行プランを提示するアルゴリズムを見つけ出すというもので、大量の航空データをもとに参加者であるデータサイエンティス達が分析し、より効率的なモデルを作り上げます。参加者間のコンペティションを通じて日々モデルの精度は向上し、最終的に上位数名が賞金を手にすることができる。GEは最終的な結果を活用することで到着予想時間の精度が40%向上すると述べています。
このように仕事が定量的に評価可能であるが、何が最適かはわからない課題はコンペティション形式が向いていると言えます。こういった課題をクラウドソースすると、多数の参加者から日々より最適な解が提出されてきます。そして最終的にはある程度の解のところで結果が収束し、現時点の科学で妥当な最適解に落ち着きます。一人のデータサイエンティストに高い報酬を払ってモデルを作ってもらうよりも、より最適な解が得られる可能性が高く、クラウドの多種・多様な高度な知識が有効に活用できる事例と言えます。
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